2023/08/31 17:16

Lacrimas-美しい涙



シチリア島のシラクーサの街中に入ると、別名「涙の聖母教会」と言われるマドンナ・デッレ・ラクリメ記念堂が目に入る。高さは74メートルにも上り、巨大な傘を半分閉じたようなモダンなデザインで遠くからでも目立つ。教会の中に入ると、実際に涙を流したという奇跡が伝えられているマリア像が中央に飾られていて、本当に多くの人がこのマリア像を一目見ようと訪れてくる。
イタリアの伝統的なデザインの素材は、木材やガラス、大理石といった自然資材が多い。そしてそれらは、緩やかな曲線美で装飾が多く施されているため、美しい芸術品のようなものが実に多い。イタリアの人々は、古いものを手直ししながらとにかく長く使う。世界遺産の建造物や芸術作品だけでなく、日用品や着るものまで長い期間大切にし、次世代に受け継ぐのが当たり前の価値観を持っている。「新しいもの」の価値は時間の経過と共に薄れていくが、「古くて良いもの」は価値が落ちることなく心を満たし続けてくれる。企業のマーケティングや流行りに流されず、長く愛せるものだけを買い、手入れしながら大切に使う。イタリアを旅するたびに、彼らの心を豊かに暮らすための習慣に感化される。
コラトゥーラ・ディ・アリーチの生産地チェターラは、人口2,100人程のアマルフィ海岸に面した小さな漁業の町だ。この辺りは、ヘラクレスが心から愛した妖精の亡骸を「この世で最も美しいこの場所に葬った」という伝説が残っていて、イタリアの中でも最も美しい場所のひとつに数えられている。色鮮やかな住宅群は、一見するとバラバラに見えるが、不思議と街に溶け込んでいる。イタリアには一度建てた建築物を壊してはいけないという法律がある。調べてみると、家全体のテイストや屋根の色などは守らなければならず、ヴィヴィッドな色の家が並んでいても調和がなされた街並みが今日まで続いている理由が少しだけわかった気がした。日本では如何にシンプルで利便性のあるデザインが勝負となる場合が多いが、イタリアでは他には無い個性あるデザインが大切にされていて、目にするもの全てに歴史が刻まれているかのように感じる。
旅は、心を豊かにしてくれる。美しい街並みや食べたことのない料理、非日常な体験はそれだけでリフレッシュできるし、古いものを「価値あるもの」と守る彼らの美意識にも触れることが出来る。マイスタヴェルクは、設立以来「終わりなき食の冒険」をコンセプトにしてきた。世界各国、日本各地にはその風土に息づく固有の文化があり、人がいて、食がある。そして、そこには未だ経験したこともない、今後の食に関する感性にまで影響を及ぼすような「美味しさ」という可能性が存在している。
弊社では、この度、この「Lacrimas」とネーミングした40mlボトルのコラトゥーラ・ディ・アリーチを発売いたします。Lacrimasはイタリア語で「涙」を意味し、「涙の聖母教会」と言われるマドンナ・デッレ・ラクリメ記念堂をモチーフに、コラトゥーラ・ディ・アリーチの製造元であるDelfino社の協力を得て作った期間限定のボトルになります。